モロオヤジ

2017.06.28.Wed.20:30
377 :あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/09/06 03:22

学生のころ、友人宅に遊びに行ったときの話。

その友人は、他人を家に上げないことでちょっと有名だったんだけど、なんとか初潜入に成功。
男の一人暮らしにしては綺麗に片付いているほうだったし、特に拒む理由も見あたらなかったのだけど。
どうもさっきからキョロキョロしている友人。
時々「あぁ」とか、「おぅ」とか呟いている。
不思議に思って問い詰めようとしたら、急に「わぁっ」と目を見開いて叫んだ。
「なんだよ」と問えば、「いや、この部屋にはな、小さいおじさんが住み着いてんだよ」と言う始末。
普段はそんなこと言わないような男だったので、さらに聞くと、
それは手のひらより一回り程大きい、ランニングに股引、バーコード頭の『モロオヤジ』なのだそうだ。
特に何もしないが、無視し続けると拗ねるので、見ていてやるのだと言う。
よく聞く類の話ではあったが、『拗ねる』というのはなんだかかわいい感じだったので、
「そんなペットみたいなおじさんなら、俺もみてみたいかもな」と言うと、
奴は「あぁ―――」と少し間を取り、
「時々な、手と口を血で真っ赤にして出て来るんだよ。初めて見たときはマジビビったな。もう慣れたけど」と付け加えた。
友人が驚いたことに味を占めたのか、小さなおじさんは時々そういう格好で出てくるのだそうだ。
驚いてやると本当に嬉しそうな顔をするから、最近ではびっくりしたフリをしてやっている、と奴は語った。


386 :あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/09/06 04:14
半年ほどして、友人から『引っ越すことにした。小さいオヤジを見たいなら部屋空いたぞ』と連絡が。
もちろん、そこへ引っ越すことなどまったく考えられなかったが、
奴が引っ越す理由に何となく興味が湧いたので、話だけでも聞きたかった。
電話をしてその旨伝えると、以前はすらすらと話したのになんだか渋っている。
交渉の結果、メシを奢る事と引き換えに話す、という方向で落ち着いた。

で、ファミレス。向かいに座った男は、私の奢りでメシを食っている。
最近は知り合いの家を渡り歩き、部屋にも帰っていないそうだ。
「何があったんだ?」と問う。
奴はメシを平らげ、「実は―――」と語りだした。
件の小さいおじさんの脅かしを、たまたま無視してしまったのだという。
しまった!と思いおじさんを見ると、それはそれは嫌な顔をしていたそうだ。
「それで―――ムカついたんだ」
そこから奴とおじさんの無言の戦いが始まった。
奴がことごとく無視し、おじさんはあの手この手で驚かせる。
もの凄い勢いで突進してきたり、奇声を上げたり。
寝起きに目の前に立っていたことも、一度や二度ではないという。
「声あげたときはちょっと感動したな。ああ、声出るんだって。
 それ以外は、何か卑怯臭いことばっかりしてくるからなあ。
 正直、寝起きドッキリとかはウザかった」
どうやらこの静かな戦いは、奴の優勢で進んでいた。


389 :あなたのうしろに名無しさんが・・・:03/09/06 04:32
「その日はレポート書いててな―――」
PCのモニタを睨みつけている奴の目の前に、血まみれの小さいおじさんが現れる。
奴は『またか』程度に受け止め、次に備えるためその行動を逐一観察していた。
ひょこひょこと、それは滑稽な歩き方をするらしい。
目の前に座り込み、おじさんは宿敵を見上げた。
奴も負けじと睨み返す。
そして気付く。おじさんが丸い何かを抱えている。
それはピンポン球くらいの大きさで、やはり血まみれだった。
今日の武器はそれかとばかりに奴はそれを見る。じっと見つめる。
それが目を開いた。
「俺の―――頭だった」
小さな自分の生首と見つめあい、奴はついに心の底から悲鳴を上げた。
「そして、小さなオヤジは嬉しそうに消えて行ったよ。本当に嬉しそうに笑ってさ。
 オヤジが消えて、俺の生首も一緒に消えても、自分の頭がちゃんと付いてるか、何度も確かめたね。
 あれは、本当に怖かった。うん、完敗だったな」
その時上げた悲鳴と同じくらい、心の底から悔しいという表情で奴は言った。
「もしかして、悔しいから引っ越すのか?」と問うと、すぐに「当たり前だ」と答える。
「でも、今度またビックリするのを忘れて同じ様なことになったら、あれ以上怖い思いさせられるのは体に悪い」
当たり前だろ。と突っ込めずに、奴の独白を聞き終えた。
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