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キャンプ中に見つけた建物 その2

2017.02.11.Sat.16:30
151 :10:2011/05/26(木) 19:51:47.33 ID:eyYw6u020

テントに入り少し落ち着いたので、俺は昼間の事を3人に話した。
すると、AもBも同じ感覚を感じたらしい。
要するに、4人とも背後に誰かいるような、そんな気配を感じていたのだった。

暫らくの沈黙のあとCが、
「ここなんかやばくないか?
 車近いし、ひとまず荷物は昼間になったら取りに戻るとして、車でふもとまで下りないか?」
Aも「その方がいいかもな…あの建物なんかヤバイ場所だったのかも…」と、
普段は結構強気なAとは思えない口調で言い出した。
BもやはりAやCと同意見のようで、どうせ荷物が盗まれるような事は無いだろうし、
ひとまず車まで行く事にしようと決まった。
その時、外で風が吹いて木々がザワザワと鳴り出した。
そして、そのザワザワという音に混じって、何かが聞こえてきた。
耳をすますと、良く聞き取れないが、風に乗って人の声のようなものが聞こえてきた。
何か歌ってるような、そんな声だった。
本格的になんかヤバイ。俺はその時そう感じた。
俺達は意を決してテントの外に出た。
そして、早足に車へと向かった。


154 :11:2011/05/26(木) 20:01:04.81 ID:eyYw6u020
その時、Bが車の方向に何かを見たらしい。らしいというのは、俺達には何も見えなかったからだ。
Bは突然立ち止まり、ガタガタ震えながら進行方向を指差すと、
「うわああああああああああああああああああああああ」
と叫びながら、車とは逆方向、川の方へと走って行ってしまった。
俺達は「おいB待てって、ちょっと止まれ!」と言いながら、Bの後を追った。
Bはそのまま川を越えると、さっきの砂利道を建物とは反対方向へと走って行く。
とにかくわけも解らずBを追いかけた。

暫らく走っていると、Bは一瞬立ち止まると90度方向をかえ、
道ではない場所を、沢の方へと下りて行ってしまった。
俺たち3人もその後を追う。

暫らく懐中電灯を照らしながら道では無い場所を走っていると、俺は脚を踏み外し、
窪みの様になっている場所に落ちてしまった。
背中を地面にぶつけて暫しの間呼吸ができず、うめきながら起き上がると、遠くにBを呼ぶAとCの声がする。
どうやら俺が落ちた事に気付いておらず、そのまま進んでしまっているようだ。


155 :12:2011/05/26(木) 20:01:51.74 ID:eyYw6u020
俺は手足を動かしてみた。
怪我はしていないようで、背中をぶつけた痛み以外に痛い場所は無い。
その間にAとCの声も聞こえなくなってしまった。
とにかく上に上がらないと。そう思った俺が窪みを登ると、また背後に気配を感じた。
恐る恐る後ろを振り向き、懐中電灯を照らした。
何もいない…
なんとなくホッとした。

よたよたと歩きながら、とりあえずB達が駆け下りて行った沢の方へと歩き出した。
沢に下りると、皆を探さないとと思い、
「おーい、A、B、Cいるかーーーーーーーー!」と大声で叫んでみた。
が、反応はない。
すると、また背後に気配を感じる…
そして、今度はそれだけではなかった。
風の乗って、さっきキャンプ地で聞いたのと同じ、何かが歌っているような声がまた聞こえてきた。
そして、まだ内容はよく解らないが、さっよりも近くはっきりと聞こえるようになってきている。


156 :13:2011/05/26(木) 20:02:31.72 ID:eyYw6u020
暑さとは違ういやな汗が全身に噴出してきた。
歌声は段々と近付いてくる。
恐怖心を振り払い背後を振り向くと、暗闇を懐中電灯で照らした。
しかし、やはりなにもいない…
歌声は更に鮮明に聞こえるようになり、ほんの20mか30m先にまで近付いてきたのだが、
何故かその時動けなかった。

動けずにいると、歌声はもうすぐ側までやってきた。
なぜか未だにどんな歌詞で歌っているのかさっぱりわからないが、
かろうじて、どうやら何かの民謡のようだということだけ解った。
混乱して、あたりをキョロキョロしながら懐中電灯で照らしまくっていると、周囲に複数の気配を感じた。
だが、気配は感じるのだが、どこにも姿が見えない。
姿が見えないのに、明らかにそこに『何かがいる』のだけは解る。
意味が解らない。
俺は恐怖心と、暗闇に一人というこの状況で、完全に冷静さを失っていた。

その時、俺のすぐ後ろで誰かが何かを囁いた。囁く時の息の生暖かさすら感じた。
今まで感じた事の無いような恐怖心を感じながら後ろを振り向むき、懐中電灯を照らした。
が、やはりそこには何もいない…
何もいないのだが、はっきりと目と鼻の先に『何か』の息遣いを感じた。


157 :14:2011/05/26(木) 20:03:25.46 ID:eyYw6u020
もう限界だった。
俺は歌声のする方向とは逆方向に全力で逃げ出した。
木の枝や茨のようなものが体に当たり、あちこちに小さな傷ができる、
それでも俺は走るのをやめなかった。

そして、どれくらい走っただろうか。結構広めの舗装された道路に出た。
道路に出る頃には、もう歌声も気配もしなくなっていた。
俺は少し安心して、もしかしたらと携帯画面を見てみたが、まだ圏外のようだ。
しかたなく、その道をあても無く歩き始めた。
広い道なので、歩いていればいずれどこかにでるだろうと思ったからだ。

暫らく歩いていると、後ろの方から車の走る音が聞こえてきた。
「助かった!」
そう思って待っていると、遠くから車のヘッドライトが見え、だんだんとこちらへ近いづいてくる。
目立つように少し道路の真ん中に寄ると、俺はありったけの声で「助けてくださーい!」と叫び続けた。
車がもうすぐ近くまで来るという頃、異変が起きた。
誰かが俺の両足首を掴んでいる…
俺はかなり強くつかまれ、足が痛いうえに身動きが全くできなくなってしまった。
それでも大声で叫び続けた。そうしなければ、この車を逃したら…
そう思うと、そちらの方が恐ろしかったからだ。


158 :15:2011/05/26(木) 20:04:17.47 ID:eyYw6u020
とうとう車は目の前まで来た。
そして、急ブレーキを踏んで俺のすぐ前で停車した。
車はいかにも高そうな外車で、中から怒鳴り声を上げながら、あからさまにそっち系のおっさんが出てきた。
普通ならこういう人達とは係わり合いになりたくない。
だが、今は非常時だ。この後はどうなってもいい。
俺は心底そんな気持ちで、おっさんに車に乗せてほしいと頼むつもりだった。
おっさんはドアを開けながら怒鳴り声を上げていたのだが、急に俺の背後を見ながら顔を引きつらせ、
大急ぎでドアを閉めると、そのまま走り去ってしまった。
…えっ
俺は呆然とした。
まだ足はつかまれたままだ。
背後になにかいる。それだけはおっさんの反応でわかったのだが、恐ろしくて後ろを振り向けない…
すると、背後から例の歌声が聞こえてきた。
そしてそれだけではなく、何か強烈な腐臭も漂ってくる。
俺はありったけの力で足を動かそうとしたが、動かない。
そして、体を捻らせた拍子に体勢を崩し、その場に倒れこんでしまった。
それでも、恐ろしくて背後を見ることができない。
しかし幸運な事に、転んだ勢いで足を掴んでいる手が離れた。


159 :16:2011/05/26(木) 20:04:59.94 ID:eyYw6u020
そのまま這うようにその場を離れると、起き上がり全力で走り出した。
この時、俺は背後を振り向き何かを見た。それは間違いない。
そしてそれに、今まで感じた事の無いような恐怖心を感じたのも間違いが無いのだが、
今思い返しても、なぜか何を見たのかが思い出せない。
これを読んでいる人はおかしいと思うのだろうが、そうとしか言いようが無い。
『何か恐ろしいものを見た』という記憶しかなかった。

たぶん1km以上は走ったんじゃないかと思う。
ポケットに入れていた携帯が突然鳴った。どうやら、携帯の繋がるところまで下りてきていたようだ。
電話に出るとそれはAだった。電話越しにCの声もする。
Aが『おい、大丈夫か?今どこにいる?』と、かなり心配しているようだ。
俺はとりあえず、無事な事と広い道にでている事を伝えると、
「Bはどうなった?無事なのか?」と聞いた。


160 :17:2011/05/26(木) 20:06:01.29 ID:eyYw6u020
Aによると、Bも無事で、3人で一緒に資材置き場の駐車場のような場所にいるらしい。
話を聞いていると、どうも俺と同じ道を下ってきていたようで、
電話をしながら暫らく歩いていると、3人が見えてきた。
キャンプ地を逃げ出してからかなり時間が経っていたのか、空が白み始めている。

3人に合流すると、Bは駐車場の縁石に座りぼーっとしている。
とりあえず俺は、皆にはぐれた後の事を説明した。
するとBが、「そう、それだ。俺が見たのも!」と言ってきた。
姿形は全く思い出せない。
でも、そこに『何か恐ろしいもの』がいたのだけは、はっきりと覚えているんだという。
AとCにそういうのを見たか聞いてみたが、2人はそういうのは見ていないという。
ただ、Bを追っている最中に、ずっと背後に気配と視線は感じていたらしい。

話しているうちに日が昇り、周囲が明るくなり始めた。
俺達4人は携帯の地図で場所を確認すると、
どうやらキャンプ地から大きく回りこんで、別の峠のほうに来ているようだが、
歩いて戻れる範囲ではあるようだ。
本当は戻りたく無いのだが、荷物も車もそこにある、戻らないわけにはいかない。

俺達は3時間かけて、キャンプしていた場所まで戻った。
戻ってみると、一見何も変化がなく、荷物もテントも車も来た時のままだ。
しかし根拠は無いが、4人とも『またあれが来るんじゃないか』と内心ビクビクだった。
中の荷物をまとめようと俺がテントに入ろうとしたとき、中からあの強烈な腐臭がしてきた。


161 :18:2011/05/26(木) 20:07:10.17 ID:eyYw6u020
俺は「うわっ」と声をあげてしりもちをついた。
別のところで荷物をまとめていたA、B、Cが、何事かと寄ってきた。
俺が「ヤバイ、なんかテントの中からあの臭いがする…」というと、
真っ青な顔でBが、「マジか…」と後ずさりした。
Aが「…とりあえず外から中を探ってみるしかなくね?」と動揺気味に言ってきたので、
外から棒でつついたり石を投げたりして、内部の反応を見てみた。
しかし、何の反応も無いし気配も無い。
Cが恐る恐るテントの窓を覗き込むと、
「見える範囲には何もいないっぽい…」と言ってきた。
俺は意を決して、テントの入り口をあけ中を覗き込んだ。
中には俺達の荷物がそのままだ。ぱっと見た限りでは、臭い以外におかしなところは何も無い。
ただ、よく見ると、テントの中央辺りが黒く煤けている。
まるで何かそこで小火でも起きたような色で、特にその辺りの腐臭が酷い。


162 :終わり:2011/05/26(木) 20:07:52.01 ID:eyYw6u020
俺達はなるべく臭いをかがないようにしながら荷物を全て外に出すと、
テントを川で念入りに洗い、臭いを完全に洗い落とし、
荷物をまとめると、早々にその場を逃げ出した。

帰り際、ふもとの小さな町でそれとなく色々聞き込みなどもしてみたのだが、
結局あれが何なのかは解らなかった。
というより、山そのものに『いわくも何も無かった』といったほうがいい状態だった。

その後、俺達には特に何も起きておらず、
結局あの晩に起きた事の真相は、今現在まで何もわかっていない。
ただ、今でも俺は少し暗闇が怖い。
常にではないが、たまに真っ暗の闇の中から、
あの何か気配や歌声が聞こえてくるんじゃないかと、不安になるときがある。

以上、これが1年前の出来事の全てです。
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