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当世話

2017.02.22.Wed.21:30
452 :1/4:2006/08/13(日) 20:59:09 ID:1KHwTJMc0

俺の実家のある地区では、『当世話(とうぜわ)』と呼ばれるシステムがあって、
それに当たった家は一年間、地区の管理を任される。
その当世話が今年はうちで、祭事につかう御社の掃除を夏に一度しなければならないので、
祖母ちゃんと俺で山に登って掃除に行った。(掃除道具を担いだ祖母ちゃんを、俺が背負って登った)

御社に来るのは十年ぶりだった。(地区の行事をサボる子どもだったので)
懐かしくて御社の周りをうろうろしていると、幹が妙に括れた大木があった。
「祖母ちゃん。そういやこの木って、どうしてこんななの?」
昔からこんなだった記憶が残っている。
「あぁ・・・そういえば話したことなかったな。掃除しながら話してやろうか」
「面白い話?」
祖母ちゃんが担いでいたカゴから掃除道具を出しながら聞くと、祖母ちゃんは口を横に広げてニヤリと笑った。
「さぁな。ずーっと昔、このへんを治めてた殿様の名前は知ってるだろ」
もちろん知っている。誰でも知ってるような有名な人だ。
「あるときな、その殿様の家来だって言う男がこの村に来た。
 村人は当然のようにその家来を持て成して、村で一番高い位置にあるこの社に泊めてやったんだ。
 だけどな、そのうち気付いた。その家来が偽者だってな。殿様との戦に破れた国の兵だったんだ」


453 :2/4:2006/08/13(日) 20:59:52 ID:1KHwTJMc0
「落ち武者ってやつ?」
「『殿様の敵兵を持て成したなんてぇのが知られたらどうなるか』と村人は怯えてな。その敵兵を殺すことにした。
 酒をたくさん飲ませてよ、酔っ払わせてな、あの木の前で殺したんだ」
例の幹が括れた大木を指差す。
「『敵の残党をやっつけたことを上に褒めてもらえるかもしれねぇ』って、首だけ残すことになってよ。
 よく研いだカマで首を切ったが、どうしても切れなくてよ。
 それで、今度は鉈を持ってきて一気に振り下ろしてな、首を切ったんだ。
 そしたら、その首はどうしてかポーンと宙を舞って、あの木の幹が二股に分かれたところに乗っかった。
 『これはいけねぇ』ってよ、男衆が木によじ登ろうとしたんだが、首から垂れた血ですべって登れない。
 なら長い棒で突いて落とそうとしたんだが、どういうわけか落ちやしねぇ。
 『うまく嵌っちまったなら仕方ねぇ』って、村人は胴体だけ処分して、首はそのままほかしといたんだわ」
「え・・・気持ち悪くね?」
顔を引き攣らせる俺を祖母ちゃんは笑う。
「滅多に登ってこねぇ御社だから、目にもつかなかったんだろ。

 そんでな、それから少したったら、今まで元気だった男が突然倒れてそのまま死んだ。
 もちろん、あの敵兵の首を切った男だ。
 このときは気にも留めなかったが、その年の作物がまったく育たなくなって、妙な病気が流行り出して、
 あの首の呪いだと思い始めたんだ。
 それでお祓いしたんだが、効き目はねぇ。
 困り果てた村人はな、その木の幹に注連縄かけてお札貼り付けて、
 首切られた男をその木に閉じ込めてやったんだわ」


454 :3/4:2006/08/13(日) 21:00:44 ID:1KHwTJMc0
「祓っても駄目だったのに?」
「何でか知らんけどよ、そうしたら災いがぴたっと止んだんだ。人間は怖ぇよ。
 祓って駄目なら閉じ込めちまえってな。

 そんでな、毎年交代で札を新しく貼ったり、注連縄が古くなったらかけ換えたりってな、
 それでどうにかやってきたんだ。
 でもな、段々段々、その習慣も薄くなってな、注連縄も札もそのままになった。
 木は生長するからよ、注連縄の巻かれたとこだけ、ああやって括れてんだ」
「じゃあ、もう呪いは解けたって?」
「いや。たまーに変なことが起こるわ。
 ○○の家のせがれ、頭がおかしいだろ。昔は何でもなかったのによ」
「何であの家だけ・・・?(おいおい、うちはどうなんだよ)」
「あの家だけじゃねぇ。下の○×の家もだ」
そういえば、○×の家は奥さんと娘がおかしくなり、数年前に引っ越したのだった。
「それから●△(他にも三軒くらい。忘れてたがいずれも変な家)」
「他の家は?てか、うちは?」
「あとの家は、もともとここらに住んでた奴らじゃねぇ。
 言ったことなかったな。
 うちの家はもともと商家でな、それなりに歴史もあったが、続けらんねぇことになってな、
 俺とお祖父さんが今の家に養子で貰われてきて、結婚して継いだんだわ」

今、俺の家はごく普通の一般家庭。
曽祖父の代で商家はすっぱりやめたようだが、今でも屋号が残ってて、
祖父母世代の人は、未だにその屋号でうちを呼ぶ。
屋号って、どの家にも当たり前にあるものだと思ってたから知らなかった。


455 :4/4:2006/08/13(日) 21:01:17 ID:1KHwTJMc0
「その家の血が絶えれば何も起こらねぇみたいでな」
「祖父ちゃんと祖母ちゃんてどこの人?」
(ニヤリと笑って)「ずぅーっと遠くだ」
なんで親戚が少ないのかわかったような・・・。
「義母から聞いた話だ。本当か知らねぇよ」
「今さらそんなw」
「まぁ、何にしても、うちは大丈夫だ。心配いらねぇ。けどわざわざ近付くなよ」

よく見ると大木の幹の二股部分には、人の頭部ほどの瘤があった。
あれの中身はまさか・・・とも思ったが、話自体の真偽も謎。
その家には悪いけど、実家がある地区にある家のうち、数軒が変なのは事実。
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